ノーコードWeb制作プラットフォームとして成長を続けるStudio社では、従来のPLG(Product Led Growth|プロダクト主導型成長)に加え、本格的な新規開拓を見据えたSLG(Sales Led Growth|営業主導型成長)へと、営業体制そのものの構築・再設計が求められていました。
プロダクト主導のインバウンド中心の営業では、狙うべき企業像や優先順位が曖昧になりやすく、活動や判断が個人の感覚に依存してしまうという課題があります。そうした状況のなかで、Studioでは「努力や根性」に依存した営業から脱却し、再現性のある営業の型を確立することを目的に、Marooと共にプロジェクトに取り組みました。
本記事では、その変化の中心を担ったインサイドセールス組織の立ち上げ責任者である、Sales Div. Inside Sales 安里亮祐氏に、立ち上げの背景から具体的な取り組み、そして今後の展望まで詳しく伺います。

───まずは、Studio様の会社概要と、安里様が担っていらっしゃるお役割についてお聞かせください。
Studioは、ノーコードでウェブサイトを制作できるデザインプラットフォームを開発・提供しています。専門的な知識がなくても直感的に使える点を強みとしており、これまで主にプロダクト主導で、お客さま自身が契約・利用を進める形で成長してきました。一方で、エンタープライズプランにおいては、営業が伴走しながら導入を進める体制を取っており、私はそのセールスチームに所属しています。
私の役割はインサイドセールスですが、組織自体が立ち上がったばかりという背景もあり、単なるアポイント獲得にとどまらず、フィールドセールスとの連携設計や、顧客管理ツールの整備、さらにはターゲット選定やアプローチ設計など、営業プロセス全体に関わっています。
インバウンドだけでは接点を築きにくいエンタープライズ領域の立ち上げが課題
───ご相談いただいた当時の課題感についてお聞かせください。
取り組みの背景として大きかったのは、営業組織自体が立ち上がったばかりだったことです。インサイドセールスという役割も、私が2025年に入社したタイミングで新設されたもので、体制や役割分担がまだ十分に整理されていない状況でした。
当時、特に課題だと感じていたのがリード管理です。HubSpotは導入していたものの、担当者情報の入力や管理ルールが曖昧で、運用が十分に回っているとは言えませんでした。その結果、営業活動を効率的に進めるための仕組みや、それを支えるリソースが不足しているという認識を持っていました。こうした状況から、営業方針や組織体制そのものを整える必要があり、外部の支援も含めて検討するようになりました。
Studioでは、これまでインサイドセールスを置かなくても事業は回っており、アウトバウンドはほとんど行わず、プロダクト主導で生まれるインバウンドの問い合わせに対して、フィールドセールスがそのまま商談対応を行う、という流れが中心でした。ただ、そのやり方では「どの企業に、どのような価値を提供できるのか」という整理が十分にできておらず、受注に至るまでの解像度は必ずしも高くありませんでした。
そこで、価値提供できる企業像を明確にし、アウトバウンドも含めてこちらから働きかけていく役割として、インサイドセールスが必要になったのがご相談の背景です。エンタープライズプランは、単価や継続性の観点からも事業上重要な位置づけにあります。インバウンドだけでは接点を持ちにくい企業層に対して、継続的に関係性を築いていく。その役割を担う存在として、インサイドセールスを位置づけています。

営業活動が「努力・根性」依存から「再現性のある型」へとシフト
───外部ベンダーを検討する中で、Marooの提案をどのように感じられましたか。また、他社と比較して選んだ理由を教えてください。
Maroo代表の山梨さんのXやホームページを拝見し、単なる実行支援にとどまらず、営業の基盤設計や立ち上げ、戦術設計までを一気通貫で支援できる点に惹かれました。まさに今のフェーズに合っていると感じたことが、検討のきっかけです。
当時は7社ほど話を聞き、比較表を作って検討していました。多くの会社は、「月●時間の稼働」や「●件の活動」といったあらかじめ固定された範囲内で施策改善や実行を担う、というスタンスだったと記憶しています。一方で、実行フェーズにおいて「どのような戦術・手順で進めるのか」といった具体的な方法論や、再現性のある実績が見えづらいケースも多かったです。
当社は、まだ「どの打ち手が有効なのか」「どの企業に、どのようにアプローチすべきか」が明確になっていない段階でした。そのため、固定的な件数や稼働時間に縛られる形ではなく、状況に応じて人月ベースで柔軟に動いてもらえる契約形態のほうが適していると感じていました。また、戦略や戦術の設計フェーズから踏み込んで支援してもらえる点も、重視していたポイントです。
加えて、営業基盤として利用しているHubSpotについても、構築や改修まで含めて支援できる会社は、比較した中ではMarooさんだけでした。方向性はぼんやりと見えているものの、具体化しきれておらず、リソース不足から基盤整備にも十分に手を付けられていなかった状況を踏まえると、伴走型で支援してもらえる点が最もフィットしていると感じました。
───プロジェクト開始から約半年が経ち、感じている変化について教えてください。
まず大きな変化として感じているのは、「どの企業で受注が生まれているのか」「どこに優先的にアプローチすべきか」を、個人の感覚ではなく、チームとして共通の基準で判断できるようになったことです。これまでも受注自体はありましたが、理想的なお客さま像や判断軸が十分に言語化されておらず、部門をまたいだ共通認識を持てていない状態でした。
そこで、受注から逆算して前提条件を整理したうえで、理想的な顧客像(ICP)やバイヤー像を定義し、リードの扱い方や判断ルールまで含めて設計し直しました。その結果、「どの層を優先して見るべきか」が共通言語となり、日々の会話や意思決定がぶれにくくなった点は、大きな変化だと感じています。
もう一つの変化は、アプローチを仕組みとして回せるようになったことです。優先度の高い企業に対して、どの順番で、何を、どの手段で届けるのかを整理し、シーケンスなどの仕組みを使って、半自動的に実行できる形にしました。手作業中心だった頃と比べて、営業活動が「頑張り」や個人の工夫に依存する状態から、再現性のある型へと切り替わった感覚があります。
加えて、実行して終わりではなく、運用の中で検証と改善が回る状態になった点も重要です。活動計画を前提に数字を日次で確認し、定例の場で目標と実績の差分を見ながら、スクリプトやメッセージ、接点の作り方を継続的にチューニングしていく。こうした運用型の進め方が定着したことで、営業における意思決定の質そのものが高まったと感じています。

ターゲット企業からのアポイント数が約3倍に。誰が担当しても同じ判断・同じ動きができる体制へ
───実際の成果についてはいかがでしょうか?
以前は、かなり広い層に対してアポイントを取っており、「ひとまず対象内だから受ける」といったケースも少なくありませんでした。それと比べると、現在は明確にターゲットと定めた企業に絞ってアポイントを取れるようになっています。その結果、ターゲット企業のアポイント数で見ると約2倍、場合によってはそれ以上に増えています。
また、単純な件数以上に、「狙った企業層との接点をどれだけ作れているか」という観点で見ても、定量的に明確な改善が出ていると感じています。これは、誰が担当しても同じ判断・同じ動きができる状態が整ってきたことの表れでもあります。
シーケンスを活用するようになって以降、設定したターゲットに対する訴求精度が、定量指標として明確に可視化されるようになりました。
実際、反響が特に良かったシーケンスでは、開封率約60%、アポイント化率2.5%と、ターゲット層に対して高い確率でメッセージが届き、初回接点の時点で一定の問題意識や関心を喚起できている状態を確認できています。
この成果は、ターゲット定義とメッセージ設計が適切に噛み合ったことで、限られた接点の中でも質の高い反応を安定して獲得できるようになったことを示しています。その結果、顧客接点の品質を担保したまま、活動量そのものも大きく拡張することができました。体感としては、全体のアプローチボリュームは従来比で2倍以上に増加しています。
ウェビナー案内などのメール施策を含めると、数千件単位でメールを送れることもあります。特に、タイミングが重要なイベント案内については、人手では到底追いつかなかった施策をスケールできるようになった点が大きく、人的リソースに過度に依存せず、レバレッジをかけられる状態になったと感じています。
───定性的な成果についてはいかがでしょうか?

定性的な変化として、大きく二つあると感じています。
一つ目は、実行部分を深瀬さん(Marooメンバー)にかなり巻き取ってもらえるようになったことで、私自身が戦術設計やターゲット設計、シーケンスの精度向上といった、より上流の業務にリソースを割けるようになった点です。日々のオペレーションから一段距離を置き、考える時間や判断する時間が明確に増えました。これは、「時間」の使い方がより価値あるものに変わったという感覚に近いです。
もう一つは、ICPをはじめとした各種定義を、HubSpotの改修とあわせて実際の運用に落とし込めたことです。KPIをアポイント数に置いていたこともあり、多くの商談を回す中でデータが着実に蓄積されていきました。その結果、どのような企業にエンタープライズプランの提案余地があるのか、また、どのような理由で受注に至らないのかといった点を、複数の切り口から分析できるようになっています。現在は、そのデータをもとに、次のフェーズに向けた戦略をかなり高い精度で描ける状態まで持ってくることができました。
まとめると、「時間価値」と「オペレーション設計」が大きく変わったと言えます。実行そのものは巻き取ってもらいながら、私自身はターゲット設計やシナリオ設計など、上流に時間を使えるようになりました。同時に運用面では、活動計画を前提に日次で数字を確認し、定例の場で目標と実績の差分を見ながら、スクリプトやメッセージ、接点の作り方を修正していく形に変わっています。その結果、個人の工夫に依存するのではなく、組織として改善が積み上がっていく状態になってきたと感じています。
単なる実行代行にとどまらず、「ヒト・メソッド・テクノロジー」で営業の仕組みそのものを作り変える支援
───他社と比べて感じるMarooのサービスの特徴はありますか?

他社と比べて最も違いを感じるのは、単なる実行代行ではなく、「ヒト・メソッド・テクノロジー」を一体で扱いながら、営業の仕組みそのものを作り変えていくという、いわばインサイドセールスエンジニアリングの思想だと思います。
こちらの成功をゴールに置いたうえで、戦術の設計から運用、改善までを含めて一体で動くスタイルなので、いわゆるBPOの枠には収まりません。具体的には、こちらの状況を理解した専任メンバーが固定で入り、一次情報を取りながら改善の精度を高めていく「固定×非分業」の体制になっています。分業で“引き継いで終わり”にならない分、顧客理解が深まりやすく、改善の打ち手も速い印象があります。
また、毎月の振り返りレポートが丁寧な点も特徴ですが、その背景には運用そのものがきちんと設計されていることがあると感じています。活動計画を前提に、数字を日次で確認し、定例の場で目標と実績の差分を見ながら、何をどう修正するかまで落とし込んでいく。振り返りが単なる“報告”ではなく、次の運用につながる設計図になっている点は、他社との大きな違いだと思います。
こうした点を踏まえると、単なるアウトソーシングというより、立ち上げ期に伴走してくれるパートナーに近い存在です。戦略の整理から実行、さらには将来的な内製化を見据えた基盤づくりまで、一気通貫で支援してもらえる点は非常に大きいと感じています。
個別の関わり方でいうと、深瀬さんとの距離感も印象的です。役割分担はありつつも、実際には直接やり取りする場面が多く、Slackやミーティングでもフラットに相談できます。「外注している」という感覚よりも、社員に近い立ち位置で一緒に動いてもらっているという印象です。
依頼できる内容の幅が広く、セグメント設計から実行、改善提案まで柔軟に対応してもらえる点も評価しています。指示待ちではなく、次の打ち手を主体的に提案してくれる関係性だからこそ、限られたリソースを最大限に活かせています。
展示会への参加や商談への同席など、現場に深く入り込んでくれる点も他社とは異なります。事業や現場を自分ごととして理解しようとする姿勢そのものが、非常にありがたいと感じています。
───どんな会社にMarooが合うと思いますか?
事業の立ち上げ期や、業務設計・戦略を見直したいタイミングにある企業には、特にフィットすると思います。戦略から考え直したい、営業やマーケティングの基盤を整えたいといった課題を抱えている企業には、非常に合いやすい印象です。
一方で、すでに商品や売り方、ターゲットが固まり、あとは実行するだけというフェーズの企業の場合、支援内容によっては少し持て余してしまうかもしれません。Marooさんの強みは、戦略・戦術・基盤構築を横断的に捉えながら、実行まで伴走できる点にあるため、そこまで含めて支援を求めている企業のほうが、価値を感じやすいと思います。
また、Marooさんは事業理解の解像度が高く、PLG(Product Led Growth|プロダクト主導型成長)のような少し特殊なモデルにおいても、上流からポイントを押さえて整理してくれます。戦術や施策の立案・設計などの考えるだけで終わらず、実行まで一緒にやり切りたいと考えている企業にとっては、まさにプロフェッショナルファームだと感じています。
───今後の展望についてお願いします。

私自身、実行しながら考えるタイプなので、動いた結果をもとに戦略を磨いていける環境が整ってきたことは大きいと感じています。実際、今後はセルフサーブのアポイントは一度大きく絞り、ABMを中心としたアプローチへ切り替えていく判断まで来ています。数を追う動きから、ターゲットと質をより強く意識した動きへとシフトしていく予定です。
その流れの中で、深瀬さんにはエンタープライズ領域におけるABM型BDRにもチャレンジしてもらうことになります。ABMにはABMなりのフレームワークがあるため、立ち上げの次のフェーズとして、あらためて設計から一緒に取り組んでいければと考えています。
こうした変化を通じて、インサイドセールスというロールの捉え方自体も、社内で変わってきました。単にアポイントを獲得する役割ではなく、「今どこが一番熱いのか」「どこに注力すべきか」をデータで把握し、分析できる存在になりつつあります。HubSpotの改善や運用について相談が集まるようになったのも、その表れだと思います。
今後は新規開拓に加えて、既存企業内での部署開拓など、より本格的なエンタープライズ開拓も進んでいくはずです。その際にも、これまで蓄積してきたデータや知見を十分に活かせると考えています。そういう意味で、インサイドセールスは単なる実行部隊ではなく、営業全体を支える基盤的な役割へと進化していきたいと考えています。

───ありがとうございました!