SCSKのPROACTIVE事業本部では、AIネイティブなERP「PROACTIVE 」の拡大に向け、HPやセミナー、展示会で獲得したリードを継続的に育成し、商談化へつなげる仕組みづくりが急務でした。マーケティングと営業の間で生じやすい認識の差や、運用の属人化を解消するため、Marooがインサイドセールスの立ち上げから伴走し、プロセス設計とテクノロジー活用の両面で体制を構築。結果として、商談設定数200%の増加を実現しました。
今回は前回の記事に続き、その変革の中心にいた御守様に、立ち上げの背景、実施した具体施策、そして将来的な内製化の展望について伺いました。

マーケティングと営業をつなぐ橋渡し役が不可欠だった
───プロアクティブ事業本部における御守様の役割について教えてください。
私が所属するプロアクティブ事業本部は、自社開発のAIネイティブERP「PROACTIVE」において、製品企画から導入支援、導入後の保守運用までを一貫して提供し、製販一体の体制で顧客企業の業務変革を支援しています。
私の役割は、インサイドセールス組織の運営責任を担うことです。営業活動の専門化を図る「The Model(ザ・モデル)」を前提に、組織設計の初期段階から携わり、業務設計から体制構築まで一貫して取り組んできました。
2024年6月、当時、プロアクティブ事業本部にはインサイドセールス機能が存在しておらず、その立ち上げを責任者として行い、組織としての活動が本格的に始動しました。立ち上げの背景には、リード発掘からパイプライン創出までを専門的に担う部門が戦略上必要である、という認識がありました。
当時は、リード獲得はマーケティングチーム、フォローは営業チームが担当する体制でしたが、営業プロセスは属人的になりやすく、アプローチ方法にばらつきが生じていました。その結果、営業が注力すべき商談進行と、リード育成の領域が混在し、運用設計として限界が見え始めていたのです。

───当時の組織が抱えていた具体的な課題について教えてください。
立ち上げ期で最も大きく感じた課題は、マーケティングと営業の間にあるコミュニケーションギャップでした。私を含む元営業メンバー3名がマーケティング部門へ異動しましたが、当初は互いの業務理解が十分ではなく、明確な認識の差が存在していました。ただ、その差が可視化されたことで、橋渡し役として機能しやすくなった側面もあったと感じています。
営業メンバーは経験と勘に頼る部分が多くプロセスが属人的になりやすい状況でした。「受注予測の精度を高めるためのパイプライン管理」という考え方が組織に浸透しておらず、リード管理はエクセルに依存していたため、仕組みとしては十分ではありませんでした。
一方で、マーケティングチーム自体は存在していたものの、新たに配属されたメンバーが多く、製品・顧客理解の成熟度から、インサイドセールスの役割を担う体制が整っていませんでした。その結果、典型的なマーケティング・営業間のすれ違い───「新規リードのナーチャリングが手つかず」「リードの確度感が一致しない」───が生まれやすい環境になっていました。特に、ホームページ経由の高確度リードに比べ、展示会やセミナー経由のリードはフォローが後回しになりやすく、リードの確度を高める役割が不在だった点は大きな課題でした。
私がインサイドセールス立ち上げの責任者に任命された背景には、「マーケティングと営業をつなぎ属人化を解消する組織ををゼロから設計し、立ち上げから運用定着まで推進してほしい」という期待がありました。社内にノウハウがない状況で伴走しながら進めていく必要があり、そこに大きな責任とやりがいを感じていました。
多機能で複雑なERPでもキャッチアップが早く、顧客と深い議論ができた
───数ある支援企業の中から、Marooをお選びになった決め手を教えてください。
Maroo代表の山梨さんがYouTubeで発信されていた「BPOを入口にしつつ、最終的には内製化を実現する」という考え方は、プロアクティブ事業本部の方向性と一致しており、強く共感しました。現時点のゴールは、BPOとして伴走いただきながら、最終的には自社で運用できる体制へと移行する「内製化」を実現することです。
また、担当者の顔が見える点も評価しています。一般的にマネージャーが窓口になりやすい体制ではなく、担当者と直接コミュニケーションできる非分業の支援体制は大きな違いでした。
組織フェーズやビジネス状況が変化する中で、内製チームと同じ水準で情報連携や意思疎通を行いながら、プロジェクト推進と施策の効果検証を高速に行える体制に魅力を感じています。
───お取り組みを開始後、Marooについて感じたことがあれば教えてください。
今回、本来であれば2024年4月から準備できれば理想的でしたが、実際に動き出せたのは7月頃と、時間が限られた中での立ち上げでした。その状況でも、Marooさんとはほぼ毎日コミュニケーションを取り、立ち上げフェーズの推進に大きく貢献いただきました。困ったときに壁打ち相手として相談できたことで、立ち上げのスピードは確実に上がった実感があります。一方的な指示ではなく、「こうした方が良くなるはずです」と状況に応じて提案をいただく伴走スタイルに助けられました。
また、他社は定義書やスクリプトを整えて提示し、手順通りに進める印象が強かったのに対し、弓手さん(Marooメンバー)は「こう改善したい」「こういう文言を追加してはどうか」といった提案を積極的に行ってくれます。壁打ちを受ける側になるような形で、改善案が継続的に出てくるので、その主体性や姿勢を強く感じています。
ERPという商材は多機能で複雑なため、一度ですべてを理解するのは難しく、キャッチアップには時間がかかると想定していました。その中で理解が早かった背景には、日々のやりとりを通じて議論が深まり、会話の質が高かったことがあります。先ほどの話ともつながりますが、Marooのメンバーは「知ったかぶりをせず、分からないことはその場で確認する」という姿勢を取ってくれます。
ERPの場合、マニュアルやトークスクリプトがあっても、その通りに進む場面はほとんどありません。新しいITの知識が求められたり、想定外の質問をいただく場面が多くあります。そうしたときに、疑問をそのままにせず積極的に相談してもらえることで、点が積み重なり、ある瞬間に線としてつながっていく。そのプロセスを一緒に作れたからこそ、キャッチアップが早かったと感じています。

Outreach導入でトッププレイヤーの行動を型化し、定型作業を最小工数で効率化
───セールスエンゲージメントツール「Outreach」を導入いただきました。その背景について、改めてお伺いできますか。
Marooさんと一緒に設計したタスクや業務フロー自体は完成していたものの、実行段階で漏れや対応の抜けが発生する点が導入の背景にありました。メール一通を送るにも、Outlookで宛先や名前を都度変更し、毎回手作業で送る必要があったため、時間と工数がかかっていました。本来なら最小限の変更で済む業務に多くのリソースを割いてしまっていた、という課題です。
また、弊社はSalesforceを基盤としているため、入力作業の負担をできるだけ減らしたいという意図もありました。お客様ごとに個別対応が必要な場面ではしっかり対応しつつ、御礼メールなど定型作業には過度に工数を割かず効率化したい、という意図です。
このような状況では、たとえ「こうすれば成果が出る」という行動の型があっても、実行の有無が担当者の判断やリソースに依存しやすくなります。その部分を標準化し、漏れなく実行できるようにするため、Outreachのシーケンス機能を活用し自動化することが生産性向上に寄与すると考え、導入しました。
現場のメンバーからも「活動効率が上がった」という声が上がっており、生産性は確実に向上しています。以前は、Salesforceに電話記録を残し、ToDoを手作業で登録していましたが、現在はOutreach上でシーケンスが自動で進むため、作業負荷が大きく下がっています。今は派遣スタッフの方にもOutreachを使ってもらい、経験に依存せず成果が出せる環境を整えています。
商談創出が目標比200%を達成、コール接続率は3倍に向上しアポイントの質が大幅に改善
───実際の成果としてはいかがでしょうか?
現在は目標達成率が200%近い状況です。これまで利用したBPO関連の他社様と比較して特に感じた違いは、提案力や主体性、そして目標に向けた姿勢の部分が大きかったと思います。
特に接続率については明確な成果が出ており、昨年度比で3倍強まで伸びています。アポイント獲得数も目標に対して確実に成果を出し、さらに積み上げていただけた点が非常に心強く感じました。通常であれば達成したタイミングで一区切りにすることも考えられますが、そうした妥協の姿勢は一切なく、常に最大値を目指す取り組みが続いていた点が印象的でした。
Outreach導入により活動量が担保され、生産性を高める方法を常に検討しながら取り組んでいただいています。時に厳しく見えるほど本気で向き合ってくださり、その姿勢が成果につながっていると感じています。
───定性面に関する成果についてはいかがでしょうか?

アポイントの質の面でも手応えを感じています。まずは「PROACTIVE」の存在を認知していただくことが重要で、その意味では、以前のBPOベンダー様との取り組みで感じた「顧客の期待値とのズレ」──例えば、ERPに全く興味のない方にアポイントが入ってしまう、という状況はほぼなくなりました。認知という観点では非常に良い状態です。
週次定例でアポイントをフィードバックする仕組みが大きく機能しており、Marooさんに獲得いただいたアポイントに弊社メンバーが対応したうえで、良かった点・改善点を細かく共有する場を設けています。
また、弓手さんがメール文面やトークの提案を積極的に行ってくださり、その際に「この文章だとアポイントは取れるが、期待値がズレる可能性がある」といった調整がその場で行えていました。こうした期待値のすり合わせが、質の向上に直結しています。スクリプトやメール内容を整えるだけでなく、「その文章でアポイントが取れた時に営業がどう感じるか」「どの確度のリードにアプローチするのが最適か」といった認識を共有できたことが大きかったです。
当初の私たちだけでは思いつかなかったメール文面の改善提案をいただくこともあり、“目線が揃っている”ことが大きな価値でした。同じゴールを共有できているからこそ、視点が一致するのだと思います。
テレアポだけの支援だと、リーダーである私がすべてを考え判断する必要がありますが、Marooさんの事業成長を起点にPDCAを伴走するしてくれる存在として関わってくれています。これは非常に大きな価値だと感じています。
Marooは内製化に必要な「ヒト」「メソッド」「テクノロジー」を統合し、三要素すべてを支援できる
───インサイドセールスのコンサルティング/BPO支援という観点で、Marooはどのような企業や組織フェーズに適しているとお考えですか。

インサイドセールスの組織がすでにある企業でも、これから立ち上げる企業でも、業種を問わずフィットすると思います。キャッチアップの速度を揃えるために、丁寧に対話を重ねてくれる点は大きな価値です。
また、内製化に必要な「ヒト」「メソッド」「テクノロジー」の三つが揃っていたことが、私たちが次のステージである内製化に進めた理由だと感じています。反対に、「マニュアルを渡すので、あとはお願いします」というスタイルを期待されている企業とは、相性が合わないかもしれません。一緒に変えていきたい、作っていきたいという意思がある企業であれば、確実に応えてくれる会社だと思います。
最終的な内製化をゴールに据えて伴走してくれる点も、他社との大きな違いです。インサイドセールスの基本的なフローは当初まったく形がありませんでしたが、弓手さんの助言を受けながら整えていきました。MarooさんにはSalesforceのデータ基盤を整備いただき、運用を支える仕組みも固まりました。
さらに、Outreachを導入したことで属人化が解消され、誰でも再現できる仕組みにまで落とし込めました。派遣スタッフの方でも成果が出せる状態になったことは大きな前進です。
MarooのメンバーはSalesforceに精通し、テクノロジーの知見も豊富です。Outreachの活用方法や他社事例の比較など、引き出しの多さは他社と比べても大きな強みだと感じています。
───2025年10月に開催された「インサイドセールスカンファレンス」にも登壇され、組織が大きくアップデートされている印象があります。これからどんな組織を目指したいのか、御守様ご自身として今後やりたいことなどをお聞かせいただけますか。
今後の展望としては、まず現在取り組んでいる「接続率向上」「アポイント率向上」については、一定の成果が出てきていると感じています。AIネイティブERP「PROACTIVE」を認知いただく段階までは、高い水準に達しているのではないかと考えています。ただ、その先のナーチャリングについては、まだ課題が残っています。
そこで現在取り組んでいるのが、興味喚起までを設計できるコンテンツづくりです。属人化させず、誰が担当しても一定の品質でお客様を育成できる“仕組み”を整えていくことが、直近の大きなテーマです。
最終的には、フィールドセールスとインサイドセールスの双方で案件を獲得できる体制を築きたいと考えています。営業でしかできない提案の価値はもちろんありますが、インサイドだからこそできるクロージングの形もあるはずです。そこを模索し、将来的にはインサイドセールスのみでクローズできる商材領域も持ちたいと考えています。

───ありがとうございました!