プログラミング学習サービスとして12年にわたり成長を続けてきたProgateは、現在、新たな挑戦のフェーズに入っています。これまで「学びの入口」を提供してきた同社が次に向き合ったのは、学習の先にある就職・転職という「出口」の課題でした。その解決に向けて立ち上げたのが、採用支援事業「Progate Prospects」です。
法人向け事業の立ち上げ経験や営業名簿がほとんどない状態から、どのように営業体制を構築し、新規事業として形にしてきたのか。その過程でMarooに何を期待し、どのような変化が生まれたのか。採用支援事業『Progate Prospects』事業開発本部 責任者の笹村氏にお話を伺いました。

───まず、Progateの事業全体における位置づけと、その中での事業部構成について教えてください。また、あわせて笹村さんが現在担われている役割やミッションについてもお聞かせいただけますか。
Progateは、今期で12年目を迎えます。現代表の加藤が大学生だった頃に創業しました。当時、大学の授業でプログラミングを学ぶ必要があったものの、オンライン教材や動画コンテンツはほとんど存在せず、分厚い参考書を使って独学するしかない環境でした。実際に学んでみると、プログラミング自体は非常に面白い一方で、学習を支える教材が極端に少ない。その違和感から「自分で作ろう」と考えたことが、Progateの原点です。
創業以降は、個人向けサービスとして会員基盤を積み上げながら、toC領域において「学びの入口」を提供することに注力してきました。ただ、2025年に入って、学習の先にある就職や転職といった「出口」が十分に用意できていないという課題が、より明確に見えてきました。
その課題に応える形で立ち上げたのが、採用支援事業「Progate Prospects」です。2025年ローンチし、当初はCOOの宮林が自身の人脈を通じて企業への案内を行っていましたが、想定以上の反響があり、事業として成立する手応えを得ることができました。
そこで法人向け事業として本格的に取り組む方針を定め、新たに法人の部署を立ち上げ、その責任者として私が参画しています。現在は、応募者紹介などの取り組みも始まり、学びとキャリアをつなぐ事業として、段階的に展開を進めているフェーズです。
営業ターゲットの拡張と、法人名簿ゼロから始まった新規事業の立ち上げ
───立ち上げ以降、事業はどのように変化してきたのでしょうか。また、営業方針やターゲットの考え方がどのように変わってきたのかについてもお聞かせください。
事業立ち上げ初期は、Sansan株式会社様や株式会社サイバーエージェント様といった、いわゆる看板となるSaaS系ITベンチャーを中心にアプローチしていました。ただ、その方針では企業数を十分に伸ばしきれないという課題が次第に明らかになってきました。
そこで10月からは、企業数の拡充を最優先事項とし、営業活動を本格化させ、目標とする企業数を明確に設定しています。対象とする企業も、SaaS系に限定せず、SES、SI、受託開発、ソフトウェアメーカー、さらには新規事業でIT人材を求める企業へと広げています。
量と質のバランスを取りながら、求職者にとって実際に選択肢となる環境を整えることを意識し、事業を前進させている段階です。

───お取り組みをご一緒し始めた当時、どのような課題意識を持っていたのか。また、事業を進めるうえでのボトルネックがどこにあったのかについてもお聞かせください。
一般的に、新規事業として法人向けサービスを立ち上げる場合、多くの企業では既存事業の中で蓄積された法人名簿があります。過去に取引や商談を行った企業のリストが、何らかの形で残っているケースがほとんどです。
一方で当時の私たちには、そうしたリード資産がほぼ存在していませんでした。代表や役員が個人的なつながりで接点を持ってきた法人のリストはあったものの、事業として継続的に活用できる名簿とは言えない状態で、実質的にはゼロからのスタートでした。まずは、この状態をゼロから一に引き上げることが最初の大きな課題であり、その立ち上げ部分でMarooさんにご協力いただいています。
現在は、新規契約を加速度的に積み上げていかなければならないフェーズにありますが、同時にリソース面の制約も明確でした。実働は私ともう一名の計二名体制で、アポイント獲得から商談、クロージングまでをすべて内製で回すには限界があります。数字を逆算すると、仮に成約率が40%だとしても、必要な成約数を達成するには、その倍以上の商談数、さらにその数倍のアポイントが必要になります。現実的に見て、人手が足りない状況でした。
加えて、商材の設計や価格のあり方についても、事業を進めながら見直している段階でした。営業活動と並行して、事業そのもの、そして組織の基盤を同時に育てていく必要がある。まさに、そうしたタイミングだったと捉えています。
───笹村さんが実際にジョインされて以降、密にコミュニケーションを取らせていただく中で、Marooに対してどのような役割や価値を期待されているのかについて教えてください。
基本的に私は、「量が質を凌駕する」という考え方を持っています。営業においては、創出される量そのものが、結果として質を表している側面があると捉えています。つまり、安定して数字が積み上がってきている状態は、それ自体が営業活動の質が上がってきている証拠だという認識です。
そのうえで、そこから先の提案の組み立て方や、どのように契約までつなげていくかについては、私たち自身の責任領域だと考えています。だからこそ、アポイント一件一件の完成度を過度に気にするよりも、まずは一定の量を継続的に生み出すことが重要だと考えています。

一般的なBPOとは異なり、改善提案が生まれ続けるMarooの伴走支援体制
───実際に取り組みを進める中で、当初の想定よりも良い意味で印象が変わった点や、ポジティブな変化を感じた部分があれば教えてください。
定例会の中で、こちらの状況を踏まえた提案をきちんと出してもらえている点は、最初に感じたポジティブな変化でした。「こういう進め方にしたい」「報告の仕方をこう変えたい」「この業界のリストを広げてみてもいいか」といった具体的な提案が継続的に出てくる中で、単に作業をこなすのではなく、考えながら取り組んでくれているという実感がありました。
そのうえで、実際に数字も少しずつ上がってきているので、私の中ではそれが非常に大きな変化であり、当初の想定を上回るポイントだと感じています。前職も含めたこれまでの経験からすると、数字が出ない状態が続く企業やチームほど、次第に「事実の報告だけ」に終始するようになるケースが少なくありません。提案が減り、改善に関する議論も自然と少なくなっていきます。
その点で、たとえば「スクリプトをこのように変更したところ、こういった反応が見られた」といった振り返りやインサイトの共有、「リスクはあるが、この領域にチャレンジしてみたい」といった前向きな提案が出てくる状態は、とても健全だと捉えています。
仮にクレームが発生した場合でも、自分たちで責任を持って対応できるという前提があるからこそ、そうした挑戦が可能になる。その姿勢と、実際に数字が伴ってきている点が、現在はうまく噛み合ってきていると感じています。
───これまでいくつかの施策をご提案し、笹村さんの合意のもとで実行・改善を回してきたかと思います。その中で、特に印象に残っている提案や取り組みがあれば教えてください。

以前から、FacebookやLinkedInを活用した運用には取り組みたいと考えていました。ただ、実際に一人でやろうとすると、想像以上に負荷が大きい。ピンポイントで一日一件程度であれば対応できますが、それを継続的に、かつ複数件同時に回していくとなると、どうしても相応の工数と集中力が求められます。
その点で、こうした運用施策の提案を受け、実際に手を動かしてもらえているのは、とても良い取り組みだと感じています。リソースに制約がある中で、「やりたいとは思っていたが手を付けられていなかった領域」を着実に前に進められているという意味でも、事業にとって価値のある支援だと捉えています。
型にはまらない小回りの利く支援で、成約確度の高いアポイントを創出
───まず、他社と比較したときに、Marooならではの特徴や強みだと感じている点があれば、笹村さんの視点で教えてください。
私が特に重視しているのは、小回りの利きやすさです。提案があらかじめ決められた型にしか当てはめられない場合、その型がうまく機能しなかった時点で、次の打ち手がなくなってしまいます。その点で、Marooさんの事業規模やメンバー構成を見ていると、状況に応じて柔軟に動ける体制だと感じています。
たとえば、A・B・Cといった施策を同時に走らせ、その中でCの効果が弱いと判断すれば、すぐに切り替えてDを試すといった意思決定ができる。あるいは、その時々の状況に応じて、別の手段や外部リソースを組み合わせるなど、取り得る選択肢が多い点も特徴だと思います。
また、リソースのアサインをすべて社内でコントロールされている点も印象的です。成果を最大化するために、どこにどのように人を割くべきか、という発想で動かれており、「コールだけを行う」「問い合わせ対応は対象外」といった固定的な業務分担に縛られていません。必要なことを、その時点で最適な形で実行する。その結果として、アジリティの高い体制が成り立っている。そこが、Marooならではの強みだと感じています。

───どのように評価されていますか。
実際にアポイント数が伸びてきたことで、成果は今月分のアポイントあたりから出始めていると感じています。量が増えるにつれて、成約率という形で質も可視化されるようになってきました。
新規で、かつ決裁権者ではない方が窓口となるケースについては、成約率30%を目標にしていますが、その水準はすでに超えています。また、経営者など意思決定者と直接つながっているケースにおいても、目標としている40%には届かないまでも、30%以上は安定して確保できています。全体として、量の拡大とともに質も着実に伴ってきている、という印象です。
───一方で、過去を振り返ると、あわせて定量的な成果についてもお伺いしたいです。
Maroo単体の取り組みという観点で見ると、これまでの経験から、うまくいっていない外注先ほど、次第に報告が減っていく傾向があると感じていました。私が参画した前後の9月末には、実際に取引を終了した会社が2社あり、定例会が実施されなくなっていたり、指示が来ないために先方が動けない状態になっていたりしました。それでも請求は人月単位で満額届き、コストに対する納得感を持ちづらい状況だったのが正直なところです。結果として、使途が見えなくなっていたコストを一度整理する必要がありました。
Progate Prospects自体は現在も投資フェーズにありますが、私の役割にはコストの最適化も含まれています。着任当初は、1社あたりの獲得コストが高くなっていたため、その点を見直してきた、というのがこれまでの取り組みです。
もう一つ大きな変化として、私たちがコア業務に集中できるようになった点があります。Marooさんからのトスアップが増えたことで商談数も増加し、以前は1日あたり5件程度だった商談が、10件入る日も出てくるようになりました。その結果、事前準備や商談の進め方を工夫するようになり、営業のやり方自体が自然と仕組み化されていきました。
現在は、営業を改めて作り直すフェーズに入っています。営業資料やサービスページの見直しに加え、プランの整理も進める予定です。あわせて、マーケティングオートメーションの導入などにも着手しています。Marooさんからのトスアップをきっかけに、良い意味での変化が連鎖し、事業と組織の両面で前に進めているタイミングだと感じています。
完成形ではなく、これからつくる事業に向き合えるのがMaroo
───Marooの支援スタイルや取り組み方が、特にフィットしそうな企業像について、笹村さんの視点で教えてください。
Marooに合うのは、まさに私たちと同じくらいの規模感の企業だと思っています。社員数が100人を超えてくると、良くも悪くも「名前のあるパートナー」を求めがちになりますが、営業という観点で見ると、1人の営業チームであっても、100人規模の営業組織であっても、本質的にやること自体は大きく変わらないと考えています。
重要なのは、パートナーが個人で活動しているか、あるいは100人規模で組織化されているかではありません。それよりも、小回りが利くかどうか、そして自分たちの事業にどれだけフィットした形で営業を組み立ててきたか、という点だと思っています。そこをきちんと見極めることが大切だと感じています。
そうした観点で見ると、私たちと同じくらいのスケール感で、すでに完成されたサービスを売るというよりも、これから磨き込みながら市場に出していく段階のサービスを扱っている企業のほうが、Marooの支援スタイルには向いていると感じています。

───Marooの伸び代についてもお伺いできますか。
私の中では、パートナーとして一緒に取り組んでいる皆さんは、基本的に同じ組織、同じチームだと捉えています。席がたまたま社外にあるだけ、という感覚に近いですね。だからこそ、皆さん一人ひとりの強度が上がることは、そのままチーム全体の強さにつながると考えています。
強度が高まれば、当然こちらからお渡しできる件数も増えていきますし、それは結果として、Marooさんの中で扱える案件数がさらに広がる可能性にもつながります。そこが、私自身が最も重要だと考えているポイントであり、同時に大きな期待を寄せている部分でもあります。
それぞれの強みを活かしながら、アプローチ先や進め方、活用するツールを適切に切り分けつつ、並行して進めていきたいと考えています。その中で、まずは件数をしっかりと担保しながら、事業の成長に合わせて、ともにスケールしていける関係でいられたらと思っています。
───最後に、契約数を一つの区切りとして、その先にどのような展望を描いていらっしゃるのか。年明け以降の事業の方向性も含めてお聞かせいただけますか。
短期的には、2025年・今期は「Progate Prospects」を通じて、求職者に新たな選択肢を提供することを最優先に考えています。企業側にとっても新しい出会いが生まれる仕組みであり、2025年いっぱいは、会社としてこの事業に全力で取り組む方針です。
来年以降については、法人向けサービスをさらに広げていく考えです。その一つが、これまで継続して取り組んできたハッカソンの活用です。現在は無料で実施していますが、優秀な学生と直接接点を持てる場として、対価を払ってでも参加したい企業は確実に存在します。実際に、ソフトバンクの韓国向けハッカソンを支援した際には高い評価をいただいており、このモデルは国内外で展開できると考えています。
また、「Progate for Business」として提供している企業向けeラーニングについても、現状はまだ規模が大きいとは言えないものの、一定数の問い合わせがあります。ここについても設計を見直し、きちんと収益化できる形にしていく予定です。学ぶ、就職する、入社後も学ぶ──そうした一連の流れを、企業向けに提供できる状態をつくることが、今後のテーマです。
中長期的には、韓国や台湾、シンガポールといった海外展開も視野に入れています。過去に海外展開で撤退した経験もありますが、その反省を踏まえたうえで、改めて挑戦したいと考えています。法人向けサービスについても、作っては見直し、必要に応じて作り替えながら育てていく、まさに今はそのフェーズにあると捉えています。

───ありがとうございました。