株式会社Progateは、プログラミングの価値を世の中に届けたいという思いからオンラインプログラミング学習サービス「Progate」を提供しています。同社はそれまで中心だったBtoCビジネスに加え、BtoBビジネスへの進出を検討していました。法人営業チームの立ち上げ当初に抱えていた課題や経営者から見た外部の専門家を活用したプロジェクトの立ち上げのメリットを同社COO宮林卓也様に伺いました。
――Progate様が法人営業(BtoBビジネス)への進出を検討したキッカケを教えてください。
Progateをご利用頂いた法人企業様に導入理由を聞いたところ、「社内でプログラミングが分かる人を増やしたい」というニーズが圧倒的に多かったことが挙げられます。具体的には、ビジネスサイドのメンバーがプログラミングの知識を持つことでエンジニアとのコミュニケーションを円滑に進めたいといった社内のコミュニケーションに課題があることがわかりました。
さらにプログラミング教育に関する市場リサーチを1万人に対して実施したところ、7割以上が「プログラミングに興味がある」との結果が出ました。一方、実際にその教育を受けたことがある人は3割に満たないことも判明したのです。
企業にニーズがありそうなことがわかったため、法人営業に注力することで今までProgateをご利用頂けていない方にもサービスを届けることができるかもしれないという仮説が生まれました。
外部企業を選定された際のポイント
――外部企業にマーケティング支援を依頼しようと考えた理由を教えてください。
私が法人営業の経験者だったこともあり、当初は営業未経験の社内メンバーで体制を構築しようと考えておりました。当時のメンバーには営業経験が無かったため、当然ですが立ち上げに必要な細かいタスクや提案資料のイメージがありません。理想の状況を作るためには、最終的に私が全て考えて形にしなければならず、工数の確保が難しくなっていた状況でした。
メンバー教育の観点でも、コロナ禍でリモートを余儀なくされていたため、ゼロからオンライン上でフォローをすることにも限界があります。打席には立ってもらいたいがフォローに大きなエネルギーを使うと、私が実現したい事業立ち上げのスピード感を出すことが難しく、外部の専門家に頼ろうという結論に至りました。
――宮林様が外部の専門家を選定される際のポイントはありますか?
自社(外部の専門家)の得意領域を無理やり私たちの課題に当てはめるのではなく、顧客を理解しようとする姿勢や積極的な提案を通じて目線合わせを大事にしているかどうかを重視しています。抽象度が高い課題感をお伝えした際、テンプレートに当てはめようとしているのか、課題に合わせて提案を考えてくれているのかは伝わってきます。ある程度は決まったテンプレートや成功パターンは存在すると思いますが、少し意図とずれた部分に関して、要望を伝えた際の対応は会社によって様々です。
コミットメント力の高さやメンバーとの相性もすごく重要だと思います。「この会社さんは現場に立ち、自分たちと一緒にやろうとしてくれているんだな」という熱意も見ています。立ち上げのプレッシャーを感じているのは社員も同じなので、経営者も社員も一丸となって取り組む為にも『外部の人』という空気感にならないように注意していました。
――Marooを選んで頂けたのはどのような理由でしょうか?
Progateの抱える課題への理解が早く、言語化力が高かった点です。課題に対する解像度が高いので、私がシェアした課題に対して、精度の高い提案を直ぐに頂けたことが印象的でした。言語化もしてくれる為、メンバーの迷う時間も、私が迷う時間も減るのではないかという狙いがありました。
Marooは複数企業の支援実績があり、ベストプラクティスを持っています。何もわからない状態で模索しながら進めるよりも、成功事例があれば「まずはそれをやってみよう!」となり、意思決定のスピードが速まります。
とにかく「最短距離」で進みたいというのが根底にありますので、創業期の「組織負債」の芽を積みたいという思いもあります。創業期に自前で構築したオペレーションがすぐに限界を迎え、後から外部の専門家の支援により再構築をしようとすると、多くのケースではカスタマイズが必要になり、結果的としてお金も時間も掛かります。最初からスケールを見越したオペレーションを組むことが出来れば、それに越した事はないと思っています。
サブスクリプションサービス特有のデータを活用した即効性のある施策への落とし込み
――具体的なプロジェクトの取り組み内容についてもお伺いできますか?
大きく3つあります。1つめは、収益化までのプロセスを入り口から出口まで定義し、プロセス上の各ステージにおける量(件数)と質(CVR)を整理するところからはじめました。
目標とするKGI、今回の場合だと有料転換する社数と金額をいかに引き上げるかを考える上でプロセスの細分化と数字での状況把握は当たり前にやるべきだと考えていました。
また、定量データをもとに進捗を可視化することで、「いま何に注力する必要があるか」という優先順位や考える領域を明確にすることができます。スタートアップ企業によくあることだと思いますが、潤沢に営業リソースがあるわけではないので、限られたリソースをどこに集中させるべきか、何をすると短期で売上貢献するかを曖昧にさせず、チームのなかで共通認識を持つことができました。
営業メンバーとMarooのコンサルタント含めて議論し、今回のプロジェクト方針として、①Webサイトのセッション数の増加、②営業が介在する商談フローを追加し、トライアル後の休眠を防止、③有料転換率の向上の3つに注力することを決めました。
2つめは、自社に対して親和性の高い顧客を過去のデータを分析することで見極めていきました。Progateの法人向けサービスは、SMB(Small and Medium Business:中小・スタートアップ企業)とEnterprise(大手企業・大規模組織)の両方の市場でニーズがあるサービスです。
一方、企業規模に合わせて年間売上(ARR:Annual Recurring Revenue)のインパクトにはかなり差があるため、顧客の投資金額に見合った価値を提供するためには、投資金額が大きい顧客に人的なリソースを多く配分する必要が出てきます。あらためてデータを見直した際、上位11%の顧客が55%の年間売上に貢献していることがわかったので、顧客規模や業界属性をもとにセグメント分類を行い、各セグメント応じてリソースの掛け方や優先順を調整していきました。
3つめは、サブスクリプションサービス特有の要素を洗い出し、さまざまな確度からデータ分析とドリルダウンを行い、仮説立てと検証サイクルを回す仕組みをつくっていきました。
例えば、Progateの無料トライアル期間は2週間なのですが、トライアル開始から何日後に有料転換する割合が高いか、また有料転換後は何ヵ月を過ぎれば解約のリスクが減るかなどのデータです。
実際に、30%程の無料トライアル顧客は、トライアル直後と終了間際の3日間で最も多く有料転換している、有料転換後、3ヵ月目の解約率が最も高く、逆に4ヵ月目に入ると解約率は極端に下がるなどの興味深いデータを整理できました。
そのデータをもとに、「CVRを最大化させるために、トライアル期間終了3日前にキャンペーンの案内をしよう」とか、「初期契約後は3ヵ月間のオンボードメニューを考えて、3ヵ月 間は契約を死守しよう」とか、メンバーから次々にアイディアが生まれました。
BtoBのサブスクリプションビジネスにおいて、このような分析フレームワークの確立や、即効性のある施策への落とし込みが初期段階で実現できたことは、プロジェクトを成功する上で重要な要素になったと思います。
経営陣の意図を的確に汲み取り、メンバーにも寄り添った手厚い支援
――外部人材を主体としたプロジェクト立ち上げとなりましたが、ご満足頂けた点はありますか?
Marooのメンバーは現場の解像度が高く、組織のオペレーション構築や必要なメンバー数、各メンバーの役割やKPIの持たせ方といった実践的なノウハウも豊富で、社内のメンバーを巻き込みながら、プロジェクトを推進して頂けた点に満足しております。
経営サイドの意図を的確に汲み取りつつ、メンバーにも寄り添った支援を頂き、中間管理職のような役割まで担ってくださった点も印象的でした。
――プロジェクトマネージャーとしての支援で良かった点はありますか?
目標数値やタスクへのコミットメントが強く、事業推進力が良かったです。必要に応じて自身の知人を含めメンバーを集めようとする「第2の人事」のような動きを意識して支援して頂いていることを強く感じました。
別のシーンでは、先手先手で社内の必要なキーパーソンに決済を得るように社内メンバーにコミュニケーションを依頼したり、「宮林さんに(内部メンバーだと)聞きづらいと思うので、私から聞いておきます」と働き掛けて頂けたりと、細かい部分のサポートも手厚かったです。
組織におけるPMの役割のひとつに「不確実性の解消」があると思っています。不透明性を排除し、実現可能性を高めていく仕事で、見通し力が求められます。例えば、タスクの納期を決めること一つとっても現実的ではない納期を決めて自身の首を締めてしまうことはよくありますよね。見通し力は「知識×経験」から生まれてくるもので、知識だけで経験が無いと机上の空論になります。反対に経験だけで知識が無いと、新しい領域に入ったときに見通しが立ちません。
最短距離を知っているMarooに支援頂くことで、実は1ヶ月で辿り着ける道のりを、見当違いな方向でPDCAを回して1年掛かってしまうリスクも軽減できることを実感しました。
経営者から見た、外部の専門家とプロジェクトを立ち上げる意義
――経営者の目線からみて、外部人材を活用するメリットはどのような点にあるとお考えですか?
必ずしも経営陣が事業戦略を作る必要は無いと思っており、責任者の得意領域でなければ専門家に入って頂くメリットは大きいと感じています。経営者が未来を描かず、足元ばかり追っているようだと会社はスケールできません。
創業期や新規事業の立ち上げは時間との戦いです。優秀な人材であれば採用には時間が掛かるため、その間に機会損失が発生します。仮説検証サイクルが半年遅れれば競合企業にシェアを取られる可能性もあります。あるいは大資本が参入するかもしれません。
ベンチャー企業ならではの機動力の高さを生かし、スピード感を持った事業推進が求められる今回のケースは専門家を入れるメリットが大きかったです。
目先の金額が多少高く見えたとしても、成功ノウハウを元にスピーディーに立ち上げられる時間価値やビジネスが進むことでシェア拡大が出来る点、マーケティング組織を構築できることを考えれば、投資対効果は高いのはないでしょうか。
――外部の専門家を活用したセールス組織の立ち上げに向いている会社や企業の特徴はありますか?
社員が中心となってエネルギーを生み出すケースも当然あると思いますが、最初の大きなエネルギーをどう生み出すか、最初の火種をどう生み出すか、最初の弾み車の回し方に迷っている企業さんにはすごく合うはずです。
――ありがとうございました!