2009年に創業した株式会社GLナビゲーションは、DXと人材教育のスペシャリストが集結し、人・組織・社会の変革を実現する企業です。人材教育サービスで創業した同社は現在、BtoB領域のITコンサルティングとBPOサービスが売上の9割以上を占めています。
同社の代表取締役を務める神田滋宣氏は属人化していた営業組織のスケールアップを目的に株式会社Marooのコンサルティングサービスを導入し、営業DXとインサイドセールスを社内に導入するオペレーション改革に着手しました。その結果、営業プロセスの標準化とデータを活用した営業組織を構築し、2年で売上8倍、粗利12倍を達成しました。
具体的に取り組んだ、①テクノロジー(Marketo Engage)の導入支援、②マーケティング思考を持ったインサイドセールス組織の立ち上げ、③データ×テクノロジーを基盤にした組織改革、神田氏にお話しを伺いました。
営業DXに取り組んだ背景
――はじめに、GLナビゲーション様の事業内容について紹介をお願いします。
人材教育サービスとDXコンサルティングサービスの2つを展開しております。
人材教育サービスは、日本人向けアジアのスタートアップ企業への海外インターンサービスを提供する「GlobalWing」と、外国人向けハイレベル日本語学習サービスを提供する「JapanWing」に分かれています。
DXコンサルティングサービスは、SFA、MA、BI等の導入に伴うセールス・マーケティング領域やデータ活用などの「攻めのDX」と、ERPやグループウェアの導入に伴う業務効率化や内部統制等の「守りのDX」の実現に向けた支援をしています。外資系コンサルティングファームやグローバル企業での情報システム部門や経営企画等のポジションで高い実績を持つコンサルタントが中心となっており、SaaS導入や運用改善に伴う企画構想や業務設計・BPRなどの上流フェーズでのコンサルティングやPMOでの支援を強みとしています。
――当時、具体的に抱えていた課題を教えてください。
IT業界全体として国内のDX/IT営業は属人的で、新しい切り口で営業組織を構築することができれば競合と差別化ができると考えていたため、「営業組織のDX化」を推進する必要性を感じていました。
営業組織のDXを進める上で、具体的に3つの課題を抱えていました。1つ目は営業のプロセスが属人的でスケーラビリティがない点、2つ目は営業データの蓄積と活用ができていない点です。そして、3つ目はDX化に向けた専任担当を社内でアサイン出来ないということです。
1つ目に関しては、当社は2019年にDX支援のコンサルティング部門を立ち上げ、順調に売上を伸ばすことができていましたが、トップセールスに依存した属人的な営業スタイルにより組織の拡大が困難な状態でした。すぐに優秀な営業担当を採用することが市況的にも採用予算的にも難しい業界ということもあり、現状の少人数組織のなかで短期間で売上を伸ばすための生産性の改善、属人化を解消した再現性の高い営業組織を構築することが急務でした。
2つ目に関しては、営業データを資産として蓄積すること、売上拡大に繋げるために活用できていない点に課題を抱えていました。以前より、人がやっていることを効率化する「オペレーションの標準化・自動化」には取り組んでいましたが、人的リソースを効率化するだけでは売上増加は期待できません。
定量データに基づき現状の課題は何なのか、売上拡大するための打手は何かのPDCAを回しながら改善に向けた営業戦略に繋がるデータ基盤の構築が必要でした。
3つ目に関しては、当時コロナ禍による売上減少の影響を受けており、当社のコンサルタントを社内業務ではなくプロジェクトのデリバリーにアサインする必要がありました。そのため、社内の営業スタッフが兼任で担当しプロジェクトを推進しなければなりませんでした。
――少数精鋭組織で勝つための生産性の向上、またその土台としての再現性の高い組織づくりやデータ活用はまさに多くの企業が抱えている重要課題だと思います。そのなかで、Marooとともに課題解決に向けたプロジェクトをスタートされたのは、どのようなポイントを期待いただいたのでしょうか。
当社では、専任不在でプロジェクト推進をする必要があったため、担当者の高い生産性を実現するためにも、外部ベンダーによるサポートは必須であると考えていました。
その中で、Marooは外資系企業のマーケター出身者が多く、BtoB営業の専門的知見や支援範囲の広さに興味を持ちました。
当時、マーケティングオートメーション(Marketo Engage)の導入を決めていたのですがMarooのコンサルタントは、具体的な取り組み事例を用いながら「どのようなオペレーションを導入すると短期の売上増加に繋がるか」を明確に提示してくれた提案や、売上を上げるための営業組織を改革するためのオペレーションを導入する考え方に関するアドバイスがありました。そのため、生産性の改善やビジネス拡大のイメージを明確に持った状態でサービスを導入することができたと思います。
取り組み①テクノロジー(Marketo Engage)の導入支援
――業務効率化を進める上で実施した取り組みを教えてください。
「Marketo Engage」を始めとしたテクノロジーを導入し、3つのフェーズに分けて業務を改善する取り組みを行いました。まずコア業務とノンコア業務を切り出し、コア業務に集中できる体制を構築。並行して業務プロセスの自動化と顧客のスコアリング化、そしてオペレーションの細分化を進めました。スコアリングでメールの開封状況やクリック率等のデータを蓄積し、顧客の反応に応じて営業対象先の優先順位や顧客ニーズが自動で把握できる基盤を整備していたったというのが大きな流れになります。
そのような過程の中、Marooはマーケティングとセールス両方の経験を持つメンバーで構成されており、単にマーケティングツールの導入支援だけでなく、現場への高い解像度をもとにしたオペレーション構築、チームへのナレッジ共有と浸透を行なっていきました。
取り組み②マーケティング思考を持ったインサイドセールス組織の立ち上げ
――マーケティング思考を持ったインサイドセールス組織はかなり難易度が高そうですが、どのように立ち上げていきましたか?
Marooコンサルタントと議論するなか、「顧客状況を把握するためのスコアデータは営業が入力せずとも自動で蓄積される」ことや「蓄積したデータの活用は個々の営業担当ではなくインサイドセールスがブレインとなって取り組む」ことなどのアイディアが次々に生まれていきました。
つまり、自動で蓄積されたデータをもとに客観的な目線で全体を俯瞰し、営業プロセス上の課題や生産性の高い顧客セグメントを浮き彫りにした改善策の実施、実行した施策の効果検証など、まさにマーケターの思考回路をインサイドセールスに落とし込む発想です。
こうして、「マーケティング思考を持ったインサイドセールス組織の立ち上げ」が本格的にスタート、営業組織のPDCAをインサイドセールスを主体に加速させていきました。
また、インサイドセールスが、リード獲得から受注までのプロセスを細分化し、歩留まりをSalesforceのレポートで可視化しながらPDCAを回す体制を整えました。前工程から後工程にプロセスを進めるために必要な打ち手を「勘」ではなく、数字ベースで意思決定できる体制に刷新しました。
取り組み③データ×テクノロジーを基盤にした組織改革
――顧客との関係を強化するために営業体制の改革にも着手されました。どのような考えを元に進めていきましたか?
まず、1社の取引先を複数名の営業担当者が対応する「N対N」の体制に変えました。複数名で対応することで、顧客の悩みや不満を複数の担当者が察知できる体制を整え、顧客との良好な関係が築きやすく、リスク分散することが目的です。
また、顧客を3つのセグメントに分類し、収益貢献度の高い領域に営業リソースを集中できるように3つのセグメントに対して担当と役割を決めました。
結果的に、商談設定率が大きく改善し、生産性を8倍改善することに成功しました。新卒や営業経験が全くないメンバーでも3億円を超える売上を創出するなど、目に見えた実績も出ています。
本プロジェクトを通じて神田氏が変化した点
――本プロジェクトを通じて神田様ご自身が大きく変化したと感じるのはどのような点でしょうか?
1つ目は、改革を進めていく中で、私のモノの見方で物事を進めていくことが営業組織の改革を遅らせ、スケーラビリティする芽を摘んでいると気づきました。短期的な収益を求めるのであれば私が一人で営業をすれば数値を作れますが、組織の拡大を考えたときにそれが最善の選択肢では無いかと思います。メンバー自らが主体的に考え行動し、結果を出せるようになることに徹しました。
2つ目は、営業の再現性を最重要視するようになりました。システム導入する前は、個人の力を伸ばしたほうが良いと考えていた時期があったのですが、周囲の成長企業を見ているとテクノロジーやデータ活用した営業プロセスを進めていかないと、これからのビジネスは絶対に勝てないと危機感を覚えました。
また、データによる事実ベースで議論ができるようになったことで、因果関係と相関関係を区別した会話ができるようになりました。いわゆる『昭和営業』では感覚による相関関係の話が中心になりがちですが、相関は事実としてデータに現れるので、「なぜこうなっているのか」という因果の仮設をメンバーと考えることができるようになっています。
「Marooは高いオーナーシップでプロジェクトを安心して一任できるパートナー」
――過去、複数のコンサルティング会社と取り組みされてきたなかでMarooの支援に価値を感じていただけたポイントはありますか?
社内のDX化において、高い専門性を持つMarooのサポートは、必要不可欠な存在でした。専任担当が不在ななかで、Marooのスタッフが持つ豊富な知見によるサジェストによって、担当者が最短ルートでプロジェクトを進める事が出来ました。
他にも口頭だけでのアウトプットではなく、パワーポイントのクオリティの高さにも毎回驚かされますし、ビジネスにつながるパートナーの紹介など、Marooのサービス領域の幅を超えた視点で積極的にネットワークを紹介いただける点にも感謝しています。
今後はセールスエンゲージメントの「Outreach」の導入など、さらなる海外テクノロジーの導入を予定しています。グローバル企業レベルの営業DXを実現していくための最重要なパートナーとしてMarooとさらなる改革を進めていきたいです。