在宅医療領域で多様なソリューションを展開するファストドクターグループが直面していたのは、GTM戦略の深化における構造的な課題だった。短期施策の繰り返しに限界を感じる中、中長期で機能するインサイドセールス組織の構築を目指して選んだパートナーが株式会社Marooである。ファストドクター株式会社 マーケティング兼インサイドセールス統括の百枝嵩裕様に、プロジェクトの経緯と変化を伺った。(聞き手:株式会社Maroo 代表取締役社長 山梨寛弥)
——まず、貴社の事業概要と、百枝様のご担当領域についてお聞かせください。
百枝様:ファストドクター株式会社は、「生活者の不安と、医療者の負担をなくす」というミッションを掲げ、1億人のかかりつけ機能を担うべく主に患者向けの往診・オンライン診療と、医療機関向けのソリューションを展開しています。事業は大きく4つあり、私が所属する在宅事業本部は在宅医療領域のソリューションを担う部署です。私はそこでインサイドセールスとマーケティングの機能統括を担っています。
在宅事業本部の直下には、2024年7月にグループインした子会社・株式会社クラウドクリニックがあります。私はそちらのマーケティング部長も兼務しており、両社のインサイドセールスとマーケティング機能を一括して統括しています。
もともとフィールドセールス出身ですが、将来的にリード獲得が事業上の重要課題になると見据え、インサイドセールス部門の立ち上げから自分自身で手がけました。インサイドセールスをマーケティング組織の配下に置く体制を立ち上げ当初から採用しており、マーケティングと連動して動くことを前提とした設計になっています。
積み上げてきた3年間の先に、見えてきた壁

——プロジェクト開始前、どのような課題を感じていましたか?
百枝様:それまでは外注先によるアウトバウンド中心の体制で事業を推進してきましたが、約3年が経過する中で、単にアポイント獲得を目的としたアプローチではなかなかサービスの価値を感じていただきにくくなりつつありました。それに伴い商談化率も伸び悩み始め、「安定して事業を成長させていくためには、抜本的にアプローチを転換しなくてはいけない」という思いが強くなっていったのです。
医療業界では、一度のご連絡で関係が深まることはあまりありません。本来であれば時間をかけて信頼を積み重ねていくべき相手に対して、十分な対話の機会を持てないまま終わってしまう。そんな状況が続いていたことへの反省が、方針転換の出発点でした。
これまでにご縁のあった先との関係を丁寧に育て直すことに軸足を移すためには、これまでのアウトバウンド運用を前提に設計されたCRM(Customer Relationship Management)基盤そのものを見直す必要がありました。継続的な関係構築を支えられる仕組みへと作り直すこと。それがMarooへご相談した際の、根本にある課題認識です。
——Marooを選ばれた理由はどこにありましたか?

百枝様:展示会(ISC:Inside Sales Conference)で何社かお話を伺っていた中で、Marooとお会いしました。最初のオンライン面談で印象的だったのは、課題への共感の深さとキャッチアップの速さです。「インサイドセールスエンジニアリング」という言葉で表現されていましたが、普遍的な枠組みの中で個別の状況にアジャストしながらコンサルティングしていくという思想に、強く共感しました。
他社の多くは「リード数が足りていますか?」という短期的な問いから入ります。しかし私が求めていたのは、理論的な裏付けのある中長期の戦略でした。一つの施策がうまくいかなくても次の手を打てる、再現性のある設計ができるパートナーかどうか。それがMarooを選んだ理由です。
上流設計でのハイパフォーマンスが、BPO移行の決断を後押しした
——取り組みを始めて、最初に変化を感じたポイントはどこでしたか?
百枝様:最初のコンサルティングフェーズは、信頼関係を構築していくフェーズでもありました。当初はBPO自体は従来の外注先が継続し、Marooには上流の企画設計やCRMのデータ整理・項目再構築を担っていただくイメージでした。
ところが上流での企画設計が進捗するにつれ、Marooのキャッチアップの速さや企画提案力が優れている点を実感するようになってきました。より早期に成果を創出するためにはあえて上流企画とBPO体制を分けるよりも、Marooのフィロソフィーを受け継ぐ同じ組織内で完結した方が良いのではと考えるようになりました。
タイミングとしてもアポイント取得率の回復対策に手詰まり感が出ていた既存の外注先から、Marooに託してみようと決断しました。
——BPOが始まってから、他社との違いを感じた点はありますか?
百枝様:Marooに一貫してお任せするメリットとして、戦略企画とその現場への落とし込みに一貫性が出るというのは頭ではわかっていましたが、やはり既存の体制を切り替えるのには不安もありました。これまでお願いしていた外注先とは長らくパートナーシップを築き、ともに事業を成長させてきた関係性があったからです。
ただ、支援いただく中で感じていたのは、実際に医療機関と向き合う現場メンバーとの接点がなかなか持てないという距離感でした。担当が変わるたびに背景の説明からやり直しになる場面もあり、積み上げてきたはずの文脈が引き継がれにくい構造に、少しずつ手詰まり感を覚えていたことも事実です。
Marooは違いました。相手の状況や背景を丁寧に捉えた上で、それに合わせてアプローチを設計してくれる。その結果、商談の質が明らかに変わりました。以前一度ご縁が途切れてしまった先でも「もう一度話を聞いてほしい」と思っていただける場面が生まれてきており、関係の再構築という意味でも手応えを感じています。
また、プライシングの見直しやマーケティング戦略の変更といった私たちの側の動きに対しても、素早くキャッチアップして現場に反映してくれる。その柔軟性が、成果につながっている大きな要因だと感じています。

顧客の成功に本気で向き合う、情熱とオーナーシップ
——特に印象に残っているエピソードや、コミュニケーション面での変化はありましたか?
百枝様:担当メンバーのクライアントワークの丁寧さには、嬉しい意味で驚かされました。与えられた役割をこなすだけでなく、「どうすればもっとよくなるか」を自ら考えて動いてくれる。その姿勢がとても心強いです。
何より伝わってくるのは、関わる方々の成功を心から願う姿勢です。山梨代表ご自身のSNSでの発信を見ていても、目の前のプロジェクトを超えて、インサイドセールスという仕事の価値そのものを高めていきたいという思いが滲み出ている。その空気感がチーム全体に自然と伝わっているのだと思います。
また、担当者が専任固定でアサインされている点も、実際に動いてみて改めて大きいと感じています。支援会社によっては、窓口となるディレクターの顔は見えていても、実際に動いているメンバーが見えなかったり、途中で変わってしまったりすることも少なくありません。それでは現場の文脈が積み上がらず、まるで自分たちの一員のように動いてもらうことは難しい。
Marooの担当メンバーは、まるで社内のメンバーのように当事者意識を持って関わってくれます。気になることがあればこちらからも遠慮なく伝えられますし、その関係性が成果にもつながっていると感じています。インサイドセールスを安心して任せられるようになったことで、私自身はインバウンド施策やマーケティング戦略の上流により多くの時間を使えるようになりました。もっと早くお願いすればよかったと思うくらいです。
目標の1.5倍超の受注額。細いパイプラインが明確に太くなった
——プロジェクトを通じて、どのような成果が得られましたか?
百枝様:BPOが本格稼働してからまだ1ヵ月強の段階ですが、セールスパイプラインが明らかに太くなってきた実感があります。象徴的な数字としては、6月は目標対比で1.5倍超の受注額を達成しました。タイミングの良さもありますが、ティアリング設計・リプライシング・インサイドセールスの訴求力が噛み合ってきた結果だと見ています。
特に手応えを感じているのは、規模の大きな医療機関との商談が生まれてきていることです。以前一度ご縁が途切れてしまった先でも、改めて丁寧にお伝えすることで「もう一度話を聞いてほしい」と思っていただける場面が増えてきました。その積み重ねが、今後より深いご支援へとつながっていける関係性の構築にもなっていると感じています。
組織面でも変化がありました。コールドコールで短期成果を追っていたメンバーをディレクション役割にシフトし、当初から目指していたリサイクル・ナーチャリング重視の戦略を少しずつ実現できるようになってきています。
医療機関ごとの規模や状況に応じてアプローチの濃淡を設計したことで、より丁寧なコミュニケーションが必要な先にはしっかりと時間と手間をかけ、そうでない先とは適切な距離感で関係を維持できる体制が整ってきました。その結果、限られたリソースを本当に弊社を求めている先へと集中できるようになっています。
現場のフィールドセールスからも、CRMに蓄積される情報の充実度が上がったことで、それぞれの案件がどのような状況にあるかを把握しやすくなったという声が出ています。先々の見通しが立てやすくなったことは、チーム全体の動きやすさにもつながっていると感じています。

「困ったらクラウドクリニック」と想起してもらえる存在へ
——今後の展望と、Marooへの期待についてお聞かせください。
百枝様:今後はAIエージェントを活用して、クラウドクリニック事業(医療事務BPOサービス)の生産性をより高め、その恩恵を顧客に価格と品質という形で還元したいです。
少々勇み足かもしれませんが、事業への想いとしては院内体制がスタンダードである業務領域に、クラウドクリニック事業をスタンダード化していくくらいの気概を持っています。
「困ったらクラウドクリニック」と想起してもらえるような顧客との関係づくりを、インサイドセールスが担うことをMarooとならできると思っています。
今後の課題はアウトバウンド・BDR領域での安定したパイプライン構築です。トップティア層はデジタルマーケティングでは引っかかりにくいため、人的リソースを投下して勝ち筋を型化することが次のフェーズの鍵になります。そこでも、これまで積み上げてきたノウハウと知見を引き継ぎながら一緒に挑戦できると考えています。
——最後に、Marooをおすすめできるとしたら、どのような会社だと思いますか?
百枝様:量より質を求めるなら、Marooとの相性はよいと思います。真価を発揮するのは、成熟した市場で差別化が必要な場合や、これから市場を作っていくフェーズの会社です。量で押し切れない環境でナレッジを持ちながら柔軟に動いてくれるパートナーを求めているなら、頼りになる存在です。
中長期で機能するインサイドセールス組織を作りたいと考えているなら、ぜひ一度話を聞いてみてほしいですね。

——ありがとうございました!
