導入事例

マーケティングと営業を紡ぐ“レベニュー組織”──再現性を生む、インサイドセールス戦略設計の実践

Cloudbase株式会社様

マーケティングと営業を紡ぐ“レベニュー組織”──再現性を生む、インサイドセールス戦略設計の実践
(左:浜元恵氏、中央:上林亜希氏、右:Maroo山梨)

クラウドセキュリティプラットフォーム「Cloudbase」を展開するCloudbase株式会社は、少数精鋭の体制でマーケティングとブランディングを分担しながら、インサイドセールスの仕組みづくりやセールス連携にも取り組んできました。今回は、エンタープライズ事業本部 マーケティングチーム部の上林亜希氏・浜元恵氏に、Marooとの協働を通じて実現した組織の変化、リード管理・ナーチャリングの最適化、そして内製化・資産化による定着と成果について、詳しくお話を伺いました。

───まずは、お二人の自己紹介と事業内容について教えてください。

上林氏:当社は、クラウドセキュリティプラットフォーム「Cloudbase」の開発・提供を行っており、私はマーケティング全般を担当しています。

体制としては、私がデマンドジェネレーション(見込み顧客の創出)を中心に、浜元が主にブランディングを担っています。6月以降、IS(インサイドセールス)の専任メンバーが加わり、体制強化を進めているフェーズです。

提供している主なサービスは、AWS、Microsoft Azure、Google Cloud、Oracle Cloudといった主要なクラウド環境に対し、リスクの検出から可視化、修正までを一気通貫で支援する「CNAPP(Cloud Native Application Protection Platforms)」製品です。

直近ではクラウド環境にとどまらず、オンプレミス環境における脆弱性などのリスクも検出できるようになりました。また、外部からアクセスできる公開資産の可視化・リスク検出をする「ASM(Attack Surface Management)」製品の開発にも取り組んでいます。

さらに、直近でAIの業務活用をより迅速かつ安全に推進するための新サービス「Cloudbase AI」をリリースしました。本サービスは、“次世代AIaaS(AI as a Service)”基盤として、企業におけるAI導入・運用をガバナンス(統制)とスピードの両面から支援する統合型プラットフォームです。

───Marooにご相談いただいた当時の課題について教えてください。

上林氏:私が入社して最初に着手したのは、リードステージの定義整理でした。具体的には、MQL(Marketing Qualified Lead)やSQL(Sales Qualified Lead)の定義を見直し、全社での共通認識の確立からスタートしました。

私たちが入社する前は、マーケティングもIS(インサイドセールス)もそれぞれ1名ずつの運用で、業務が属人化しており、プロセスや判断基準が“個人の頭の中”にある状態でした。少人数ならではのスピード感という利点はある一方で、事業拡大を見据えたときに再現性のない運用は大きな制約になります。そこで、個人依存から脱却し、チームで再現可能な仕組みに変えていくことが、最優先の課題だと捉えていました。

業務フローの面でも、たとえばリードのリサイクル基準が曖昧だったり、日々のオペレーションにも明文化されたルールがなかったりと、ナレッジの蓄積・共有が進んでいない状況でした。判断が属人的になりやすく、各メンバーの経験や感覚に委ねられていたのです。

また、ICP(Ideal Customer Profile/理想的な顧客像)についても、「この業界・この規模の企業をターゲットにする」といった方針は存在していたものの、詳細な定義まではされておらず、形式知として共有されていませんでした。

特定メンバーの中には、「年商◯◯億円以上の企業」「◯◯業界に属する企業」といった暗黙の共通認識がありましたが、それが言語化・体系化されていなかったため、現場では“なんとなく”の判断にとどまっていたのが実情です。

特に営業現場に引き継ぐ段階になると、「なぜこの業界に刺さるのか?」といった背景、たとえば、「この業界では〇〇という業務系システムが一般的に利用されており、近年それがクラウドシフトされ始め、それが当社サービスと親和性が高い」といった因果関係についても、メンバー間での理解にばらつきがありました。この“解像度の差”は営業メンバー間にとどまらず、マーケティングや他部門との間でも認識のズレを生み、組織として目線が揃っていない状態が続いていたのです。これもまた、構造的な課題のひとつでした。

(上林亜希氏)

内製体制に備え、営業アセットおよびオンボーディングコンテンツを事前に体系化

───部署や個人単位で解釈が異なることで、顧客解像度が均一化されていない状況だったと思います。それを踏まえて、Marooとの取り組み内容について教えてください。

上林氏:Marooさんとは、戦略設計の初期フェーズから伴走いただきました。まずはICP(Ideal Customer Profile/理想的な顧客プロファイル)の再定義から着手し、「誰に届けるべきか」というペルソナの明確化と、それに紐づくオペレーション全体の整備を進めました。

その過程では、既存のリード管理やリサイクルプロセスを一度棚卸し、Salesforceなど社内に点在していた情報を構造的に整理しました。各種テンプレートや図解など、Marooさんが用意してくださった資料により、複雑なプロセスも直感的に理解しやすかったです。

さらに、自社で設計した「リサイクル管理プロセス」を営業チームと共有し、「このプロセスを共通ルールとして運用しよう」という合意形成ができたことも大きな成果です。このプロセスを起点に、今後は部門横断でPDCAサイクルを回していくための基盤が整いつつあります。

浜元氏:ナーチャリングについても、本来はマーケティング、インサイドセールス、営業の3部門が連携し、共通の理解のもとで実行されるべき活動ですが、現場レベルでは分断が起きやすい領域です。特に見落とされがちなのが、“営業起点のナーチャリング”。たとえば、「一定期間は営業がリードを保有する」「一定条件を満たさなければISに戻す」といったシンプルな運用ルールがあるだけでも、ナーチャリングの質と連携精度は大きく変わります。

実際に、こうしたExit Criteria(引き渡し・戻しの判断基準)を明文化することで、分業体制の中でも業務のつながりが滑らかになり、ナーチャリングを“チーム全体で担う”体制が形になってきました。

当社の商材は契約までのリードタイムが長く、商談後に半年〜1年ほど間が空くこともあります。以前は、「とりあえず営業が持っておく」という非効率な運用が散見されていましたが、「3カ月以内に次のアクションを設定する」といった具体的な判断基準を設けたことで、営業活動にもメリハリが生まれ、商談の進行管理にも一定のリズムができてきたと実感しています。

───本来マーケティングチームのミッションとは少し異なる領域にも見えるのですが、そこはどういった背景があったのでしょうか?

上林氏:おっしゃる通り、一般的なマーケティングの範囲を超えた取り組みではありました。ただ、当社は少数精鋭の組織であることもあり、私と浜元の2人で設計しながら、営業とも密に連携して推進していく体制を取っていました。「担当領域にこだわらず、今必要なことに柔軟に対応する」というスタンスで推進しています。

私自身は、デマンドジェネレーションに加えてマーケティングオペレーション(Marketing Ops)も兼任しており、業務範囲はかなり広範です。マーケOpsは、掘り下げていくとセールスOpsとも密接につながる領域であるため、結果的に両者の橋渡しを担うような役割に自然とシフトしていきました。

最終的に重要になるのは、「Salesforceに何のデータを蓄積するか」「そのデータをもとに、何を問い、何を改善するか」といったPDCAの起点となる設計です。初期段階ではアクティビティの“量”を追うことが必要ですが、同時に「どんな問いを立てるか」という“質”の視点も欠かせません。この両輪で運用を改善していく意識が非常に重要だと考えています。

浜元氏:後半フェーズでご提供いただいた各種コンテンツや、実際にロールプレイを通じて得られた体験はとても印象に残っています。

セキュリティ業界は専門性が高く、キャッチアップに時間と深い理解が求められるドメインですが、そうした前提に踏み込んで丁寧にキャッチアップしながら支援いただけたことに、非常に感謝しています。

さらに、作成いただいた資料は、戦略設計のみで利用する限定的な成果物ではなく、社内オンボーディングコンテンツとしても十分に活用できる汎用性の高い内容でした。新たに入社したメンバーへのトレーニングにもそのまま転用できる構成となっており、「これは長期的に使える資産になる」と確信しています。

今後、社内の人材育成や仕組み化を進めていく上でも、非常に価値の高いナレッジベースになると感じています。

(浜元恵氏)

Marooは”営業の資産づくり”に伴走してくれる

───現時点でお二人の視点から見えている社内の変化や、「これから良くなっていきそうだな」と感じる兆しがあれば、ぜひ教えていただきたいです。

上林氏:マーケティングの視点になりますが、これまで言語化されていなかったICP(理想的な顧客プロファイル)やバリューメッセージを、Marooさんとの壁打ちを通じて共通言語として整理・体系化できたことは大きな成果でした。

その結果、私と浜元の間で認識が揃い、各プロジェクトでの意思決定スピードが格段に向上しました。たとえば、次年度の施策検討時にも「この企画はターゲットとずれているので見送り」といった判断が以前より明確に、迅速にできるようになっています。実際に施策実行時にも助かる場面が増えており、成果にも確実に結びついていると感じています。

また、各種アウトプットをフレームワークに沿って整理できたことで、内製化の推進とオンボーディング効率の向上にも期待しています。今後は新メンバーにも「この型に沿って進めてください」と明確に伝えられるようになるため、業務立ち上がりのスピードの改善を見込んでいます。

BPOとの連携においても、優先度別にペルソナを4分類に整理し、「優先度の高い層からアプローチしてほしい」と具体的に指示を出せるようになったことで、単なる順番コールではなく、意図ある“戦略的架電”が実現できるようになっています。結果的に、ホットなリードを“熱いうちに”アプローチする体制も整い、運用の質が向上しています。

浜元氏:組織内の行動や意識の変化という意味では、個々のナーチャリングプロセスを図式化してもらえたことがとても大きな転機になりました。

営業が「どのタイミングでマーケにリードを戻すべきか」、マーケが「どのような状態のリードを受け取るべきか」といったすり合わせが自然と生まれるようになり、「ナーチャリングは組織全体で取り組むもの」という意識が徐々に根づいてきた実感があります。

定量的な成果としての振り返りや可視化はこれからですが、「コールから商談への接続率」については明らかに改善傾向があります。トークスクリプトを読み上げるだけでもアポに結びつくケースが増えており、コール経験の浅いメンバーでも一定の確率で応じてもらえる場面が多くなりました。

また、トークフローのチャートも非常に実用的で、PC画面を見ながら会話を進めるだけで成果につながるような場面もあります。

さらに、よくある質問に対する想定問答集(オブジェクションハンドリング)のガイドラインも、チームで共通のスタンス・解釈を持つための基盤として非常に役立っています。回答の型が明確になったことで、誰が対応しても一定のクオリティが担保され、属人性の排除にもつながっています。こうした基盤整備が、今後の接続率や商談化率の安定・向上につながっていくことを期待しています。

内製だと1年以上掛かりそうなマーケティング戦略を3ヶ月で実装

───Marooとの取り組みを経て、どのような点に投資対効果を感じていただけましたか?

上林氏:正直に言って、私自身が一番「投資対効果」を実感しているかもしれません(笑)。マーケティングの本質は、目の前の施策に取り組みながらも、常に1年後、さらには2~3年後を見据えて動くことにあると考えています。ただ、その“遠くを見る視点”をチームで共有し、言語化していくプロセスは非常に難易度が高く、正直「1~2年かけて徐々に整えていくものだろう」と腹をくくっていました。

しかし今回、Marooさんの支援によって、各種フレームワークをもとに要素を1つずつ構造化・言語化するプロセスを進めた結果、わずか3ヶ月で「マーケティングの全体像」や「あるべき戦略の型」を社内に明示・共有できる状態に到達できたのです。

マーケティングの役割は、短期的に成果を狙う施策と、中長期的に顧客との関係構築を行う施策の両輪を回すことにあります。今回の取り組みでは、その役割と運用イメージを社内で明文化・可視化できたことが、非常に大きなブレークスルーでした。

浜元氏:加えて、我々のようなセキュリティ領域の事業は専門性が高く、業界構造も複雑です。その中で、Marooさんはビジネス背景や意思決定構造をしっかりと咀嚼したうえで、営業戦略の“勝ち筋”を共に見極め、仮説の提起・検証・実行支援まで伴走してくれました。単なるアドバイザーではなく、実際に手を動かしながらチームと一緒に前進してくださった姿勢には、本当に感謝しています。

実際にご提供いただいたテンプレートのスプレッドシートも、弊社側の課題感や現状にちゃんと合わせてカスタマイズされていたのが印象的でした。「これ、うちにとって必要な要素がちゃんと入ってるな」と思える内容で、他のテンプレートも色々と見させてもらったんですが、「これはうち向けに選ばれてるんだな」と実感できるレベルでした。状況をきちんと理解したうえで、戦略的に動いてくださっているのが伝わってきて、とてもありがたかったですね。

属人化を脱却し、組織で動ける仕組みに──“3ヶ月で立ち上がる”インサイドセールス設計

───Marooのサービスが向いている企業像について、どんな企業におすすめしたいですか?

上林氏:私たちのように、マーケティングやインサイドセールスの仕組みがまだ十分に整っていない企業にとって、Marooさんの支援は非常にフィットすると思います。ゼロベースから自社だけで構築しようとすると、どうしても時間とリソースがかかりますが、そのプロセスを2〜3カ月で立ち上げられるという点に、大きな価値を感じました。

今回の取り組みも、IS不在の状態からのスタートでしたが、十分に成果を出すことができました。これは、営業がマーケやISの役割を兼任しているような体制の企業でも、十分に再現可能だと思っています。スタートアップに限らず、中堅企業や大企業の新規事業部門でも、同じ課題感を抱えているケースは多いはずです。

「足元のやりたいことが多すぎて、未来のための戦略設計や運用整備に手が回らない」といった状況のチームにとって、Marooさんのような“立ち上げを伴走してくれる外部パートナー”の存在は非常に心強いと感じました。

浜元氏:個人的に印象的だったのは、こちらが言葉にできていない悩みや課題も、Marooさんに投げると必ず返ってきたことです。それがとても大きな安心感につながっていました。

最初は「そもそも何を相談していいか分からない」という状況だったのですが、抽象的な悩みでもきちんと受け止めてくれたことで、本音で話すことができました。必ずしも言語化された課題でなくても、図やスプレッドシートといった形にして持ち込めば、そこから一緒に構造化・整理してくれる。この姿勢がとてもありがたかったです。

マーケティング担当が1人だけのような環境だと、どうしても孤独や不安を感じがちですが、外部から客観的に壁打ちし、方針を一緒に組み立ててくれる存在がいることは、本当に大きな支えになると思います。

───ありがとうございました!

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